ギア3段でも峠は上れる。ミニベロ登坂のコツとカスタム案

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ダホンK3のインプレッション報告。

平地走行ロングライドに続いて、今度はヒルクライムのテスト。東京の西側、日の出町~青梅市付近にある梅ヶ谷峠と二ツ塚峠をはしごしてみた。

ミニベロで峠を走って気づいた点、改造案などをまとめてみたい。

梅ヶ谷峠(日の出町側から)

GW10連休の令和年号初日、午後から雨の予報だったので、短時間で上れる峠を選んでみた。

STRAVA 梅ヶ谷峠

奥多摩の手前に、日の出町と青梅を南北につなぐ梅ヶ谷・二ツ塚という兄弟峠がある。

吉野街道を走っていると、この2つの峠から下りて来るロードバイクとよく遭遇する。つるつる温泉の方まで行くと、さらに梅野木峠という名前がよく似た峠も存在するらしい。

南の日の出町側からは「かやくぼ」というT字路が起点になる。

ここにコンビニがあるので補給やトイレ休憩には便利だった。どちらの峠も北の青梅側から道なりに下りてくると、このコンビニで合流することになる。

峠の樹木葬10万円~

かやくぼ交差点から梅ヶ谷峠に向かう途中で、多摩聖地霊園の案内板が出てくる。

多摩聖地霊園の樹木葬

気になったので後で調べたところ、「樹木葬」の合祀タイプは税込10万円。個別タイプで永代供養になると1区画75万くらいになる。どちらも年間管理費は不要。

死んだ後の葬式代よりも、自転車パーツにお金をかけたい人には向いている格安墓地だ。奥多摩に近いがそこまで交通も不便でなく、ライダー仲間に墓参りしてもらいやすい。

青梅きのこガーデン

T字路を北に向かい「坂本」という交差点で左に折れると梅ヶ谷峠に向かう。

日の出町側からは傾斜がゆるいが、頂上付近の数十メートルだけ本格的な坂になる。序盤はK3の1速(17T)でシートに腰かけたままペダルを回せたが、終盤は立ち漕ぎせざるを得なかった。

次に走った二ツ塚峠よりも、梅ヶ谷峠の方が少しだけ勾配はきついようだ。

梅ヶ谷峠の頂上部分(Dahon K3)

峠を過ぎて北に向かうと、途中で「青梅きのこガーデン」の案内表示が出てくる。

青梅きのこガーデンの看板

奥多摩エリアでおなじみの「きのこセンター(風張林道)」「竹の子の里(ラピュタ坂)」とよく似た施設。

しかし梅ヶ谷峠は市街地に近く、これらの激坂に比べればたいしたことない。看板も他よりフレンドリーに見える。

二ツ塚峠(青梅側から)

梅ヶ谷峠を青梅側に下りたら吉野街道を東に向かい、JAのある交差点から秋川街道に折れる。そこから二ツ塚峠の頂上までは長い上り坂。

二ツ塚峠

二ツ塚峠も梅ヶ谷峠も、北からアクセスする方が勾配はきついようだ。こちらは長いわりにゆったりした坂で、ほとんど立ち漕ぎせずにこなせた。

頂上の様子は下の写真のとおり。梅ヶ谷峠と同じく眺めがよいわけではなく、いまいち「峠を上った」という実感がわかない。

二ツ塚峠の頂上部(Dahon K3)

奥多摩の道が積雪・凍結する季節でも、このあたりはまだ自転車で走れそう。標高は低いが何度も往復すれば、オフシーズンのコンディション維持に役立つだろう。

この兄弟峠は連続してアクセスしやすく周回向きだ。地元ライダー用の地味な練習コースといえる。

二ツ塚峠の裏道

そのまま道なりに日の出町側に下ると、先ほどの「かやくぼ」交差点にたどりついた。せっかくなので、日の出町観光協会の脇にある別の道から二ツ塚峠を上り直してみた。

途中にコンクリート工場があり、やや荒れた林道風の道を体験できる。

二ツ塚峠の裏道

舗装が荒れていて、昨日の雨でぬかるんでいる部分もあった。

しかし濡れたグレーチングや落ち葉で後輪が滑らないように気をつける点は、ロードバイクと変わらない。タイヤの太いK3なら、難なく上ることができた。

二ツ塚峠付近の脇道

そして二ツ塚峠の最高部手前にある交差点から、日の出町側に戻る。

こちらのルートは市営のサッカー場や霊園があり、路面は整備されている。見晴らしもよく、気持ちよい練習コースだった。

二ツ塚峠に向かう別の道

人気のある道なのか、ロードバイクで上って来る人とも何台かすれ違った。しかし峠に来るとミニベロはさっぱり見かけない。

小径車で坂を上るTIPS

2つの峠で実験した結果、14インチ小径車で立ち漕ぎ登坂は可能だとわかった。

ロードに比べて少し不安な感じはするが、車体を左右に振って急坂を上ることはできる。

ミニベロでダンシング

今回は長めのバーエンドバーを付けてきたので、そこを握ればドロップハンドルと同じ感覚で操縦できた。

フラットハンドルで立ち漕ぎできないこともないが、長く続く坂ならバーエンドを握った方がずっと楽だ。

ダホンK3に取り付けたバーエンドバー

バイクを左右に振りつつ上るなら、車体と並行にハンドルを握った方がバランスを取りやすい。ビンディングペダルの「引き足」ならぬ「引き腕」という感じで、ハンドルを引く力の反作用でペダルを踏み込める。

3段変速の縛りを楽しむ

今まで乗っていたロードバイクは旧型の105コンポで10速×フロント2枚。

それに比べると3段変速のダホンK3はいたってシンプルなギア構成。いろいろな道で試してみて、以下のような使い分けに落ち着いた。

  • 1速(17T)…きつい坂(急勾配は立ち漕ぎ)
  • 2速(13T)…平地漕ぎ出し、ゆるい坂
  • 3速(9T)…平地巡航、下り坂

街中を普通に走っている間は、ほとんど2~3速しか使わない。信号停止して漕ぎ出す際は2速。それ以外は3速のままこなせる。

K3の9Tは、以前乗っていたシングルギアのロード(ギア比2.78)と同じくらいの負荷に感じた。もともと重いペダルを回すのに慣れていたので、フロント53T×リア9Tでもそこまできつくない。

峠に挑む際は、ある程度勾配がきつくなったところで1速(17T)に固定。

ロー側はそこで打ち止めなので「ギアを温存」とか無駄に悩む必要がない。「3速」という制約のもと、与えられた道具を駆使していかに切り抜けるかというストイックなゲームになる。

路面の勾配を予測する

ギア構成がシンプルだと、路面の傾斜に対する感覚が研ぎ澄まされる。馬力のない軽自動車を使いこなしているうちに、自然と運転スキルが養える感覚に近い。

シングル~3速ギアの場合は、前方に坂が見えた時点で「事前に助走しておく」配慮が必要。K3なら勾配の変化を予測して、早めにギアを変えておくセンスが培われる。

ダホンK3のシフトレバー

K3は親指で押し込む方式のシフターで、かつギアレシオの落差が大きい。

そのためロードのSTIレバーに比べて、変速時に指に加わる負担は馬鹿にならない。レバーの表面は滑り止め加工されていないので、たまに汗で指が滑ることもある。

ぺダリングの負荷を平準化するには、できるだけこまめにギアチェンジしたいところ。しかしレバーが重いせいで変速操作にストレスを感じてしまう。

ちょっとした勾配の変化ならギアを変えずに進めてしまうので、その分、足が疲れてスピードも落ちるのはデメリットだ。

K3の峠向け改造案

K3の購入前にKHSのバーコンも試してみたが、やはりシマノのデュアルコントロールレバーにはかなわないと感じた。

STIならブレーキレバーを握ったポジションのまま変速できる。さらにシフトレバーを押し込む指先の負荷も小さい。

ヒルクライムではギアチェンジの回数が増えるので、シフターを軽くできれば快適さがアップする。

ドロップハンドル+STI換装

ドロップハンドルの利点は多様なポジションをとれるだけでなく、STIレバーを装着できる点にもある。ブルホーンハンドルでも姿勢は楽になるが、こまめな変速にはバーエンドコントローラーよりデュアルコントロールレバーの方が向いている。

ダホンK3にドロップハンドルとSTIシフターを取り付ける改造例は、まだ見たことがない。

パイプの直径を合わせるために、少なくともハンドルポストを外折れ式に交換する必要がある。するとK3の売りである、折りたたみ時のコンパクトさが損なわれてしまう。

また低速時の直進安定性が微妙なので、下ハンとブラケット間のポジションチェンジが難しい。たとえ一瞬でも手放し運転するのは不安なため、片手ずつ持ち替えるやり方になるだろう。

DAHON K3に電動コンポ?

変速レバーの重さを解決するには、電動式に替えるのも手だ。ダホンK3にアルテグラやデュラエースの電動コンポーネントを乗せることは可能なのだろうか。

そもそもギアは3速なので、上位グレードのコンポを積んでも明らかにオーバースペック。たかだが数万円のアルミフレームに、何十万もする高価なパーツを組み合わせるのも酔狂といえる。

しかし小径車の駆動系は操作がきついので、電動化するメリットはある。いずれ14インチ小径車のラインナップが広がって、電動変速付きの上位機種が出てくれるとおもしろい。

K3で峠は上れる

本格的なヒルクライムではなかったが、ダホンK3で峠は上れた。局所的に10%以上ありそうな勾配でも、立ち漕ぎでなんとかこなせる。

フロントギアは53Tの大口径とはいえ、リア17Tにセットすればシッティングでこなせる区間もある。普段ロードに乗って鍛えている人なら、そこそこの峠はK3でも走れると思う。

下りもスピードを抑えれば、特に恐怖は覚えなかった。強いて言えば、高速回転するハブやスプロケットが焼き切れないかと不安になる。

ダホンK3の駆動系

ギアが3速しかないので、フロントダブルの車種に比べれば不利な点は否めない。しかし「折りたたみ14インチ」というスペックからすれば、思った以上に坂も上れるという感想だ。

実際のところ完成車重量7.8kgという軽さを生かした登坂こそがK3の本領かもしれない。脚力のある人ならK3で富士山や乗鞍岳を上るのも不可能ではないだろう。