滋賀の草津駅からレンタサイクルで行けるMIHO MUSEUMレビュー

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滋賀県甲賀市の山の中にMIHO MUSEUMという美術館がある。ルーブル美術館のガラスのピラミッドを設計したI・M・ペイの作品で、日本国内で見学できる施設としては唯一のもの。

美術館へのアクセスは、最寄りの石山寺駅からバスが出ている。ただし本数は1時間に1本程度で所要時間50分かかり、料金は片道820円。ルートを見るとそれほど険しい山道でもなさそうなので、草津でレンタサイクルを借りて自走してみた。

MIHO MUSEUM StravaMIHO MUSEUM Strava

草津駅からミュージアムまでの距離は、県道16号経由で18.3km。美術館の標高は390m。帰りはStravaのデータが飛んだうえ、そのまま電車に乗ってしまったのでルートがおかしくなってしまった。

草津駅のレンタサイクル

草津駅で自転車を借りたのは、JR西日本系列の「駅リンくん」というサービス。元はレンタカー屋のようで、大阪から富山や山口まで広く展開している。利用料金は1回350円と安く、定期利用の分も含めてママチャリが大量に用意されていた。

草津駅のレンタサイクル

レンタサイクルには残念ながらギアがついていない。荷物は草津駅の改札にあるコインロッカーに預けておくと便利だ。ママチャリにはかごがついているので、上着やドリンクをここに入れれば手ぶらで移動できる。

MIHO MUSEUMにいたる山道

草津駅を出て国道1号線に入り、ロードサイドのファミレスで腹ごしらえ。そこから左に折れて新幹線の高架下を通り、パナソニックの巨大な工場を抜けて名神高速をくぐる。県道43号のちょっとした坂を超えると「平野町」という交差点があり、この角にあるローソンが最後の補給ポイントだった。

その後、道がだんだん狭くなり、橋をいくつか渡ると山道になってくる。しかし坂はゆるやかで、道中に峠と呼べるような区間もなかった。

MIHO MUSEUMまでの道

変速なしのママチャリでも、立ちこぎだけで対応できるくらいの傾斜だ。美術館の前にある急坂だけ自転車を押して歩いた。

久々に乗るママチャリは、ハンドルが手前すぎて違和感がある。坂道でダンシングする際は、思い切り前の方に体を伸ばしてスキージャンプのような恰好になるとペダルを踏みやすいようだ。

道の途中に「三筋の滝」という地味な観光スポットがあった。道端に自転車を止めて、ちょっと川に下りれば見られる位置にある。

三筋の滝

ゴールまで残り9kmくらいになると、美術館への距離案内が出てきた。途中にある宗教関連や自然農法の施設、ゴルフ場に向かう車で交通量は多い。たまにロードバイクの人ともすれ違う。

外国人観光客に大人気

美術館の周辺は観光バスの往来が激しく、途中に臨時駐車場まで用意されていた。駐車場の前では渋滞も発生しており、まるでディズニーランドのようにごった返していた。

観光客の8割がたは中国人。富士山や鹿児島の砂むし温泉のように、日本観光の定番コースに組み込まれたのだろう。しだれ桜が満開だったので、花見の時期も重なったためと思われる。

ミホミュージアムの花見

エントランスのチケット売り場やトイレに何十人も並んでいる。どうやら男性トイレを女性に開放して、男性は地下の業務用トイレを使うルールにしているようだ。

建物の設計者も、これほどの来客を見込んでいなかったのだろう。本館のトイレはそこまで混んでいなかったので、急ぎでなければ先に進んだ方がスムーズだ。

トンネルとエントランス

美術館に向かう、金属パネルで覆われたSF映画のようなトンネルが見どころ。出口はワイヤーで吊られた橋になっている。滋賀の山奥でこのハイテクな演出というギャップがおもしろい。

MIHO MUSEUMのトンネル

「トンネルを抜けると桃源郷」というコンセプトは中国の古典に由来する。設計者も外国人であるせいか、どことなく日本的なセンスでない海外の美術館を訪れた気分がする。

MIHO MUSEUMのエントランス

建築本体は地中に埋められているので、外から見えるのはガラスの入母屋くらい。ルーブル美術館と同じピラミッド型のスカイライトもあり、素材は現代的だがいろいろな様式が入り混じっている。中の展示物と同じく、建物も折衷的なデザインを目指しているように見える。

屋根を支えているトラスの部材が太いので、ルーブルのように「軽やか」というより重厚感を感じた。ガラスの下にルーバーも配置されて、日射制御やパッシブデザインに配慮されている。

山奥にある神殿のような美術館

内部は床も壁も大理石で覆われていて、まるでピラミッドかエジプトの神殿のようだ。世界各地の古代美術を集めたコレクションというイメージには合っている。

MIHO MUSEUMの外観

春の企画展は「猿楽と面」。100個くらい大量に陳列されていたので、じっくり見る余裕がなかった。定番の「翁」や「若い女」はどれも似たような感じで、北陸地方や狂言用の変わったお面の方が記憶に残っている。

ミホミュージアムの内部

常設展には古代ギリシア・ローマからエジプト、ペルシア、アジア各地域の古代美術が集められている。教科書に載っているような有名な作品もいくつか見かけた。

各地域をテーマにした小部屋には、I・M・ペイの設計意図も合わせて説明されている。特大サイズの仏立像やカーペットに対しては、そこだけトップライトを設けて自然光を当てたりする工夫がみられた。

MIHO MUSEUMのエントランス

開放的な吹き抜けの廊下部分と、天井の低い展示室を行き来する動線になっている。途中でガラス越しに遠くの山々を眺められるので、ちょうどいい休憩になる。

共用部にはかなり大きな植物もあり、虫も多そうな立地なので展示品に影響はないのだろうか。展示品が多いので、見る側としては適度に休めて助かった。空いていれば何時間でも過ごしていたい、気持ちのいい空間だった。

京都の第一旭と新福菜館は行列

レンタサイクルで向かったおかげで、バス代を1,000円以上節約できた。浮いたお金で、そのまま京都に行ってラーメンを食べることにした。高尚な芸術鑑賞をした後は、俗なものを食べてバランスを取りたくなる。

サイクリングとラーメンの相性がよい点については、自転車マンガの『のりりん』でも力説されている。しかしながら、有名店の第一旭と新福菜館はどちらも行列ができていた。

京都駅近くの第一旭と新福菜館

ためしにラーメン屋の向かいにオープンしていた、崇仁新町の屋台村に行ってみた。こちらは市立芸大の移転まで、2年半限定の仮設プロジェクトらしい。地元でも流行りのお店がコンテナ屋台に出店していて、おすすめの観光スポットともいえる。

崇仁新町の屋台村

なんとなく宗教関連施設と思って敬遠していたミホ・ミュージアム。実際に行ってみると、特に館内に教義が掲げられているとか宗教的な色合いはなかった。ただ、山の中にこんな豪華な施設が存在するということ自体に信仰のパワーを思い知らされる。

山の中を少しドライブするだけで、海外旅行したような気分になれる美術館。ほとんど勾配はなくトレーニングとしては物足りない山道だが、ツーリングの目的地としてはちょうどよさそうだった。