樽見駅から歩いて能郷白山に登山(能郷谷ルートピストン)

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奥美濃の最高峰、能郷白山(1,617m)に日帰り登山してみた。ぎりぎり百名山から漏れた惜しい山だが、濃尾平野から北に見える山塊の中では最も標高が高い。

ヤマレコ、能郷白山

12月に入ると温見峠が冬季閉鎖されてしまうため、能郷谷ルートからピストンすることにした。さいわい山頂にかけてまだ積雪はなかったが、日没が早く帰りは日が暮れてしまった。

登山道の序盤は坂が急なので、夜間はヘッドライトを使った方が歩きやすい。また林道の途中に洗い越しが3か所あるので、防水機能のついたシューズもあると便利だ。

温水峠は冬季閉鎖で能郷谷ルートへ

能郷白山の登山道は、能郷谷ルートと温水峠ルートの2種類がある。一般的には車で温水峠まで上って、山頂にショートカットする後者が楽なようだ。

しかし日本道路交通情報センター(JATRIC)のウェブサイトによると、国道157号は12/4から本巣市根尾大河原~温水峠区間が冬季閉鎖になっている。能郷~黒津~大河原区間は12/10から閉鎖予定だが、いずれにしても峠まで車で到達することはできない。

あいにく自転車もパンク修理中。歩いて温見峠に向かう方法もあるが、地図を見るとやや遠回りになる。今回は能郷集落から歩く能郷谷ルートを選ぶことにした。

途中、道の駅がある「うすずみ温泉」のフロントで、地元の山人連絡協議会作成の手描きマップをいただけた。温泉の公式サイトから高解像度のPDFファイルをダウンロードできる。

能郷谷コースの地図

(クリックで拡大)

能郷白山以外に、近くの倉見山と岩岳の地図も公開されている。登山ルートが詳しく説明されているので大変ありがたい。

樽見駅~黒津谷バス停

樽見駅から能郷谷の林道ゲート・登山口までは、車で来ることができる。ダートを走れるマウンテンバイクなら、さらに奥の渡渉ポイントまでアクセスできるだろう。駅から能郷集落までバスも出ているが、時間が読めないので登山口までは歩くことにした。

途中にあった交番で、念のため登山届を提出。予報によると本巣市は最高気温17度まで上がるので、冬の登山としては悪くない天気だ。午前中の気温は根尾のあたりで10度。日が差すと汗ばむくらいの陽気だった。

空は雲が多いので、山の上からの眺望はいまいちな予感。雨が降るほどではなさそうだが、山頂はおそらくガスの中だろう。

根尾の集落

「黒津口」のバス停がある交差点で、黒川工務店を目印にして左に曲がる。能郷谷の登山口に向かうには、ここで国道157号から分岐することになる。

黒津口バス停

道路情報はまだ通行止め表示になっていなかったので、少し進んで温見峠の方を見てみた。ゲートは開いており、ここはまだ車で通行できるようだ。

能郷集落~林道入口の津高橋

交差点を過ぎたすぐ先に「猿楽」と書かれた立派な神社がある。ここで行われる能郷の能・狂言は、国の重要無形民俗文化財に指定されているらしい。

能郷集落の神社

神社の前に「能郷」バス停と、電話ボックスを改造した登山届所がある。中に用紙とペンが置いてあるので、ここで登山届を提出することもできる。

能郷バス停

能郷バス停以降もまだ民家が数軒あり、クラシック音楽が流れている牛舎を見かけた。家の横をサルが2匹歩いていたが、このあたりでは見慣れた日常風景という感じだ。

林道の途中で車が3台とめてあった。道中で登山客と一人もすれ違わなかったところをみると、農作業か林道に仕事で来ている人たちだろう。

津高橋

樽見駅から10km、2時間歩いて津高橋に到着。結構距離があったので、ここまではバスを利用するか、車や自転車で来た方がよかった気がする。出発した時間も遅かったので、登山口に着くのは昼頃になりそうだ。

能郷谷の林道~登山口

橋を渡った先はまだ舗装路で、じわじわ上り坂になる。途中のゲートに「私有地につき…」と書かれていたが、「立入禁止」とまでは書かれていない。ほかに迂回する道も見当たらなかったので、脇を抜けて通り過ぎた。

林道のゲート

途中に3か所くらい洗い越しがある。水量が多く、防水シューズでなければ濡れずに渡ることは難しい。道の両脇はまだ水深が浅いが、真ん中を突っ切るとくるぶしあたりまで水没する。

林道の渡渉ポイント

キーンのトレッキングシューズはゴアテックスでないとはいえ、独自の防水透湿素材KEEN.DRYが効いて濡れずに済んだ。

KEENのトレッキングシューズ

林道を歩き続けると、途中で道が終わってコーンが2本経っている。左手の山肌に見えているガードレールが気になるが、そこにつながる道はない。

林道の終点

ここは右手に見える細い道が正解らしい。まわりの藪も深く不安な道だが、方角的には能郷白山に向かっている。

登山口に続く藪道

渡渉地点~序盤の急登

藪道を進むと、能郷白山の登山道入口にたどり着いた。地図が書いてある看板は朽ちて読めなくなっている。

能郷白山の登山道入口

その先にまた渡渉地点があった。昨晩雨が降っていたので水量が心配だったが、石を伝って問題なく渡れるレベルだった。

登山道入口の渡渉

川を渡ると、なだらかな林道とはがらっと変わって、つづら折りの急坂に突入する。尾根沿いで道は明瞭だが、ところどころ渡してあるロープをつかまないと登れないないくらい傾斜がきつい。

前山の急登

能郷谷ルート全体を通して岩場・鎖場はなかったが、序盤の急坂は息つく暇もない難所だった。真冬なのにかなりの量の汗をかく。

後でヤマレコの標高図を見ると、登山口~前山2km強の区間で800mも登らされていた。神奈川県の裏丹沢で有名な風巻尾根は、水平距離3.3kmで高低差900m。それよりもきつい。

コース途中に合計6か所ほど、入口~山頂までの距離表示があった。途中の林道の雰囲気からして能郷谷ルートは寂しい道かと思ったが、意外と道案内が充実していて助かった。

少し傾斜がゆるくなった最初の道標でランチ休憩。朝握ってきた梅干し入りの玄米おにぎりをいただく。この段階で時刻は午後1時。

2番目の登山道入口~前山

次の急坂を登り切ると、不思議なところにガードレールがあった。その先に2つ目の登山道入り口案内表示。右手の藪に踏み跡が見えるが、この案内板の裏手の坂が正しいルートなようだ。

能郷谷ルートのガードレール

急坂の途中には人知れず地蔵が置いてあったりする。缶ビールが供えてあったので、たまにここを通る人もいるのだろう。

そこから先、少し道がなだらかになって2番目の道標に到達。また山頂まで3.6kmあるが、入口からの1.2kmでかなり標高を稼いだ気がする。

能郷白山の道標

ここまで来ると、まわりの山々を見下ろすくらいの高さになる。本巣市~揖斐川町のエリアを見渡すと山ばかり。

前山からの眺め

ようやく「前山」の山頂が見えてくるあたりで勾配は一段落する。この付近の尾根は痩せ気味なので、強風時は足元に注意。まわりに低木が茂っていて山頂には近寄れない。後は尾根沿いに、能郷白山までのんびり下って上るかたちになる。

前山の山頂

前山~能郷白山

前山の標高は1,505m。ここから約2.5kmかけて、標高1,617mの能郷白山まで稜線沿いに歩く。神奈川県でいうと、丹沢山(1,567m)から蛭ヶ岳(1,672m)まで丹沢主稜を縦走するルートによく似ている。

前山~能郷白山の稜線

登山道には距離表示の案内板以外にも、木にテープが巻いてあったりタグが付いていたりする。前山付近は笹が茂っていたが、登山道の脇は丁寧に刈り取られていて歩きやすい。こんな場所でも道の手入れをしてくださる方がいるのだろう。

木につけられた目印

5番目の道標によると、山頂まで残り500m。次第に風が強くなってきたが、登山道は笹におおわれているので、体感的にはそれほどきつくない。

霧の合間から、山頂に建つ神社の奥宮が見えてくる。最後の坂で徐々に視界が悪くなり、完全にガスの中に入ってしまった。

能郷白山の山頂(奥宮と三角点)

山頂付近で道がふたつに分かれる。直進すれば奥宮、右に曲がると三角点があった。たいして離れていないので、せっかくここまで来たら両方訪問しておきたい。

能郷白山、山頂の分かれ道

山頂にある能郷白山神社の奥宮は木造の簡素な小屋。こんな吹きさらしの場所で持ちこたえているのが不思議に思う。毎年かなり雪も積もるだろう。

能郷白山神社の奥宮

奥宮の近くに「天狗の遊び木」という札がかけられた木があった。

天狗の遊び木

先ほどの分岐点に戻って、今度は三角点の方に向かってみる。山頂に建てられた杭は真新しく、本巣山人連絡協議会による平成28年5月28日の建立と書かれていた。その横には、昭和49年製の古い杭も残っている。

能郷白山、山頂の杭

そして地面には一等三角点が設置されている。

一等三角点

前山からの下り

能郷白山の山頂はガスに包まれていたが、前山につながる稜線鞍部は眺めがよかった。北の方角には、温見峠につながる国道沿いの川原が見渡せる。前山から下る途中は南側の眺望がよく、徳山ダムまで見下ろせる。

能郷白山から徳山ダムの眺め

12月初旬の曇り空、尾根沿いで視界は開けているが、17時を過ぎるとさすがに暗くなってきた。落ち葉に埋もれた浮石を踏んで転びそうになったり、足元が怪しくなってくる。能郷谷ルートは登山口から一本道なので、さいわい迷う心配はない。

2番目の登山道入口を通過したあたりで、持参したライトを点灯した。標高が下がるにつれて気温も上がり、下りでも汗ばむくらいの気候だった。

夜の能郷谷ルート

最初の道標に到着して、登山口まであと500m。ここから先はロープが渡された難所が続く。

夜間に下山するなら、ハンズフリーのヘッドライトも持ってきた方がよかった。片手にライトを持ちながら、ロープを握って坂を下りるのは骨が折れる。

次第に水の流れる音が聞こえてきて、18時に渡渉ポイントに到着。水量は変わりないが、不安定な石もあるので気が抜けない。

能郷白山の渡渉

藪の中をライト片手に歩いていると、ときどき茂みで動物が動いてびっくりさせられる。途中で地面に石が並んでいると思ったら、その先の道がなくなって川になっていた。

林道の石

林道には2か所、わかりにくい分岐があるので夜間は注意。「私有地」ゲートのあたりから、携帯電話がつながるようになる。

Fitbit Charge 2の歩数記録によると、今日は47km歩いて58,263歩。購入以来の最高記録を更新した。

Fitbitの記録

樽見駅から能郷白山まで歩くのは、さすがに時間がかかりすぎた。帰りは日が暮れてしまったので、日帰りピストンするなら登山口まで車か自転車でアプローチした方がいいだろう。能郷谷の林道はまだましだが、ただでさえ危険な温見峠を夜走るのはもっと危ない。

山頂が曇っていたのは残念だが、岐阜の滞在中、積雪前に能郷白山に登れたのはよかった。能郷谷ルートは距離も長く序盤の急登がきつかったので、自信がなければ遠回りでも温見峠ルートの方がおすすめだ。