新しく購入したBROOKSのRavenna 8というシューズをレビューしてみたい。クッション性重視の設計で、価格的にもアシックスGT-2000によく似たモデルといえる。
BROOKSは海外でメジャーだが、日本での知名度は低いせいか格安でたたき売りされているときがある。今回は定価1万以上のラベナシリーズが、型落ち半額以下で入手できた。
ときわスポーツで型落ちシューズ選び
最近ランニングシューズをよく買うショップは「ときわスポーツ」。東京西エリアから埼玉にかけて多く出店しているスポーツ用品専門店だ。「クレジットカードが使えるのは5,000円以上」という制約はあるが、独自の会員カード割引が効く。
どこから流れて来たのか、5年前のadizero Japan1など古いモデルをセールで平積みしていたりする。大型店とは違う独特の品ぞろえで、掘り出し物を探すのが楽しい。
今回も安めの型落ち製品を探したところ、アシックスのGT-2000 NEW YORKは8千円台になっていた。これでも定価より安いが、ときわスポーツならもう一段階下がるはずだ。
海外より国内メーカーが高い理由
5,000円以下のシューズとしては、アシックスのJOG 100と似たミズノのマキシマイザーが置いてあった。JOG 100は最近JOG 100 2にアップデートされ、カラバリも豊富なので地味に需要があるのだろう。マキシマイザーと履き比べて廉価帯のシューズも評価してみたいものだ。
同じくニューバランスの5千円モデル、M460も豊富に在庫されていた。ターサージールが気にったので「シューズはアシックスに限る」と思っていたが、結局大幅値引きされた海外モデルを買うパターンが続いている。見た目はやはりアディダスやナイキの方がかっこいい。
普通は輸入品の方が高いはずだが、ランニングシューズに限っては逆の状況になっている。アシックスやミズノが高止まりしてセールの割引率も低いのは、需給バランスによるのだろう。マラソン大会で観察しても、両ブランドのシェアが圧倒的に高い。
ブルックスの型落ちが半額以下
セール品のコーナーに、ブルックスの「ラベナ8」というシューズが並んでいた。定価11,880円に対して、ときわスポーツの店頭価格はなんと4,980円。
もともと廉価帯のマキシマイザーやM460に比べると、ラベナ8の価格はGT-2000級。ソールまわりの仕様やアッパー素材は凝っていて、シンプルな安物シューズより高機能に見える。
ショップの店員さんによると「ブルックスはランニングシューズの専業ブランドなのでクオリティーは高い」とのことだった。たまにマラソン大会で見かけることはあるが、ディアドラ並みにマイナーといえる。
5千円以下の販売価格に対して地味に高性能。なんとなくお買い得な気がして、今回はラベナ8を購入することにした。
ラベナ8の外観とフィット感
ブルックスのデザインはアメリカっぽい独特のセンスだが、グレーの配色なら許容範囲だ。トレーニング専用と割り切れば、見てくれはどうでも構わない。渋めの配色だが、リフレクターはしっかりついている。
「BROOKS Ravenna8の履き心地は、HOKA ONE ONE Clifton2に似ている」というレビューもあった。見た目はHOKAほどでないが、確かにソールは分厚く安定性・クッション性重視の設計であることがわかる。
サイズは27cmでちょうどよく、甲の締め付けや踵のこすれも気にならない。ワイズはやや広めで、アッパーのメッシュ素材も適度に柔らかい。
前回ディアドラで失敗した経験から、特にかかとのフィット感は重視している。店頭で試し履きした際の「ちょっとした違和感」が、いずれ靴擦れの原因になりかねない。
クッション性と安定感は申し分ない
ランニング歴13年。これまで履いたシューズの中で、ラベナ8はクッション性・ホールド感が最高だった。思い返せばアディゼロのCSシリーズ、Japan、ニュートンMV2、ターサージールと、サブ4~サブ3狙いの軽量シューズばかり履いてきた。
ターサーがスパルタンな「せんべい布団」だとすると、ラベナ8はふかふかのコイルスプリングマットレスという印象だ。ソールにDNAというブルックス独自のクッション素材が内蔵され、着地の際の安心感が半端でない。
最近買ったシューズの中では、ニューバランスのトレラン用MT620に近い感じ。こちらはオフロード用のソールなので単純比較はできないが、ロード用のシューズでこのクッション性は未知の領域だった。
ラベナ8の走行感と疲労感
ひとまずデフォルト状態で、近所を軽く歩いたり走ったりしてみた。新品状態でソールの反発力は抜群に良い。足裏の感触が気持ちよくて、ついついスピードを出して走ってしまう。1kmくらい流した感じでは、靴擦れする傾向もみられなかった。
翌日は舗装路を14kmほど走ってみたところ、普段より6分もタイムが縮まった。ランニングシューズを新調すると気分的に盛り上がるのか、たいていペースが早くなる。
着地時の安定感は、これまで履いていたアンダーアーマーのラピッドより格段によい。ここしばらく5千円程度の格安シューズばかり履いてきたので、明らかに違いがわかる。
ただしクッション性が高いとはいえ、足へのダメージが大きく緩和されるわけではなさそうだ。ソールの反発力が強くスピードが出て走らされる分、膝に負荷がかかっているように感じた。
インソールをSOFSOLEに交換
その後ラベナ8のインソールをソフソールのジェル入りに替えたら、さらに着地がマイルドになった。
固いアスファルトの路面でも、まるでタータン素材のトラックを走っているような感触になる。さすがにここまでくると、足裏がグニャグニャした感覚で不安定すぎるきらいがある。
これはロードバイクのフレームとホイールの組み合わせに近い議論かもしれない。剛性と振動吸収性のバランスを取るのがベターだとすると、ラベナ8に柔らかすぎるインソールは向いていない。それよりもアーチのサポートがしっかりした、ソリッドなインソールの方が適しているのだろう。
買いだめしたいくらいの完成度
他のブルックス製品も気になるが、セール中のうちにラベナ8を複数買ってストックしておきたい気がしてきた。後継製品のラベナ9では履き心地が変わってしまうおそれがある。
こうしてシューズを買い替える度に、新製品を試し履きして確認するのは面倒だ。主力商品は毎年バージョンアップされるが、そこまで性能が変わるとも思えない。気に入ったモデルが見つかれば、何足も買って数年使いまわす方が合理的な気がする。
ただしそうやってシューズ選びで悩むことも、楽しみのひとつと言えないこともない。バイクの改造に比べて、ランニングはシューズや靴下くらいしか選べる余地がない。理想のランニングシューズを探すプロセスは、スーツ姿のビジネスマンが時計や鞄選びにこだわるのと同じなのだろう。